矯正治療の痛み、徹底解説!原因から対処法、いつまで続く?(専門家と経験者が 語る真実)

【監修 You矯正歯科 大阪医院院長 青山健一】

矯正治療を検討されている多くの方が抱える不安、それは「痛み」についてではないでしょうか。
歯並びを美しく整えたいという気持ちはあっても、「治療期間中ずっと痛みに耐えなければならないのでは?」と不安を感じ、一歩踏み出せない方も少なくありません。

歯並びを美しく整えるために、歯を動かすというプロセスは避けられません。
歯が動くとき、具体的にどのような痛みが生じるのか、なぜ痛むのか、そしてその痛みにどう対処すれば良いのかを、矯正治療の経験者であり歯科医師の視点から詳しく解説します。
この情報を知ることで、痛みに対する心の準備ができ、矯正治療とうまく付き合えるようになるはずです。

1.矯正治療の痛みの正体:歯が動くとなぜ痛むのか?

矯正治療で歯を動かす際に痛みが生じるのは、「体が起こす正常な反応炎症反応)」の一部であるため、ある程度の痛みは仕方ないことだ」と受け止める必要があります。

☆痛みの科学的メカニズム

歯と、歯が埋まっている骨の間には「歯根膜」という組織が存在します。この歯根膜には、血管や神経、さまざまな細胞が存在しています。
矯正力によって歯に力が加わると、歯根膜の組織は「圧迫される側(圧迫側)」と「引っ張られる側(牽引側)」に分かれます。

1.圧迫側での変化:圧迫側の血管が圧迫されると、血流障害が起こります。

2.炎症物質の出現:血流障害の結果、プロスタグランジンやブラジキニンといった「炎症メディエーター」と呼ばれる炎症に関連した化学物質が出現します。

3.痛みの発生
・プロスタグランジンの作用によって、痛み、熱、腫れなどの症状、すなわち「炎症」が引き起こされます。
・ブラジキニンは生体内でも最も強い発痛物質と呼ばれており、神経を興奮させることにより痛みを発生させます。

・さらに、プロスタグランジンはブラジキニンの作用を強め、ブラジキニンはプロスタグランジンをより多く作るという相互作用があるため、炎症や痛みが強く感じられる仕組みとなっています。
つまり、矯正治療で歯を動かすためには、この炎症反応が不可欠であり、それに伴って痛みが生じてしまうのです。

2.矯正の痛みは「どんな痛み」で「いつまで続く」のか

☆痛みの種類と感覚

歯が動く痛みは、主に食事などで「物を噛んだ時」に強く感じます。
痛みの例えとしてよく言われるのは、「歯が浮いたような鈍い痛み」です。
噛むと痛くて噛めないため、柔らかいものしか食べられなくなる状況になることがあります。

痛む期間は限定的

矯正治療期間中、24時間ずっと歯が痛いというわけではありません。痛みが生じる期間は、主に矯正器具を装着した直後や、ワイヤーを交換した直後に限定されます。
歯が動く際の痛みは、通常以下のサイクルで発生します。

1.初期の移動(ピーク):

・器具装着直後は基本的に痛みはありませんが、装着してから4~6時間くらいで違和感や痛みを感じ始めます。
・痛みは翌日から始まり、2~3日間がピークとなります。
・特に初めて歯を動かす時が最も強く痛みを感じる傾向にあります。

2.移動の安定:

・その後、痛みはだんだんと弱まっていき、1週間後には痛みが落ち着いて通常通りの生活が送れるようになります。
・長くても1週間続かないことがほとんどです。

3.安定後の再移動:

・通常、約1ヶ月後にワイヤーの交換が行われますが、ワイヤー交換後も翌日から2~3日同じように痛みが生じます。
ただし、治療を受けるにつれて痛みに対するストレスはだんだん軽減されていく傾向があり、痛みの期間はさらに短縮され、ほとんどの場合1日で収まるようになります。

矯正治療期間は1年~2年半など長期にわたりますが、最初の1週間を除けば、その後は装置を交換するたびに約1日痛むだけであり、その痛み自体にも体が慣れてしまいますので、矯正の痛みは「大したことはない」と結論づけられます。

☆痛みの感じ方には個人差がある

同じ力で歯を引っ張っても、痛みを感じる程度には個人差が非常に大きいのが特徴です。

・「痛くなかった」という人もいれば。
・「我慢できる痛みだった」という人もいます。
・まれに「夜中に痛くて飛び起きた」「眠れなかった」という人もいます。

一般的に、若年者の方が痛みを弱く感じる傾向にあります。一方、神経質な方や心配症の方は、痛みをより強く感じる傾向にあることも指摘されています。

☆装置による痛みの種類

ブラケットやワイヤーを使った矯正治療の場合、歯が動く痛み以外にも、装置自体による痛みが生じることがあります。

・物理的な痛み:ワイヤーやブラケット(歯の表面に付ける小さなボタン)などの矯正装置が、頬の内側や唇、舌といった口腔内の粘膜に擦れることで生じる痛みです。
この種類の痛みは我慢せずに担当医に相談することが重要です。

3.痛みを軽減し、乗り越えるための対処法

痛みは体の適応反応であり、治療初期の2~3日のピーク期間を乗り越えれば、必ず落ち着きます。
痛みを乗り切るための対処法は主に四つあります。

1.食事の工夫

痛みが強いとき(主に装着後2~3日)は、硬いものやよく噛まないといけないものは避け、なるべく柔らかい食べ物を選びましょう。

具体的には、お粥やうどん、ヨーグルトなどが良いでしょう。柔らかいお魚やカフェラテのような飲み物も食事として役立ちます。痛みがひどい間は、柔らかいものしか噛めないことを前提に食事を計画することが必要です。

しかし、ワイヤー交換から1日~3日が経過すれば、ほとんどの場合、硬いものを噛んでも痛くなくなるため、日常生活において食事に長く制限がかかることはありません。

2.痛み止めの服用

痛みを強く感じる場合は、痛み止めの服用を検討しましょう。市販薬のバファリンやカロナールなどの服用が選択肢となります。

ただし、注意が必要です。ロキソニンやボルタレンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、痛みの原因となるプロスタグランジンが作られるのを抑えるため、痛みの軽減には効果的ですが、炎症が抑えられることで、歯の移動自体も遅れてしまうことがあります。

一時的な服用であれば大きな問題はありませんが、継続的に飲み続けてしまうと、移動が遅れるだけでなく、副作用による胃腸障害などのリスクもあります。
痛み止めを飲む頻度や種類については、必ず担当医に相談しましょう。

3.担当医への相談と工夫

痛みに対する配慮は、治療計画や装置の調整によって可能です。

・装置の調整:もしワイヤーの端が頬や唇に当たって傷ができている場合は、我慢せずに担当医に相談してください。ワイヤーの調整や、当たるところにワックスを貼るなどの対応をしてもらえます。

・力の調整:痛みを強く感じやすい方の場合は、担当医が配慮し、交換するワイヤーのサイズを細くしたり、歯を引っ張る力を調整したりすることで、痛みを軽減できる場合があります。

・予約の調整:旅行や大切なイベントなど、楽しみたい予定があるときに痛みのピーク(装着・交換の翌日から2~3日)が重ならないよう、事前に予約の日程を調整してもらうことも検討しましょう。

・ワックスの使用:装置が頬に擦れてどうしても痛い場合、歯科医院で提供される「ワックス」を使用して対応できます。ワックスはゴムやガムのような素材で、装置にベタっと貼り付けてカバーすることで、装置の角や突起が粘膜に当たるのを防ぎ、痛みをなくすことができます。

4.進化する矯正器具と痛み

昔の矯正治療では、器具や治療法の関係で歯に大きな力がかかっていたため、痛みを感じやすい治療となっていました。しかし、現在は器具やワイヤーが改良され、昔よりは痛みを感じにくくなっています。

例えば、ニッケルチタンワイヤーという、弱く規則的な力がかけられる形状記憶合金のワイヤーが開発され、従来のワイヤーに比べて、治療初期の強い痛みを大きく緩和することが可能となりました。

マウスピース矯正と痛み

近年普及しているマウスピース型矯正装置は、比較的凹凸が少ないため、従来の装置に比べて苦痛が少ないという利点があります。また、マウスピース矯正自体は、適正な装着時間さえ守っていれば、それほど痛みを生じさせない傾向があります。

ただし、患者様ご自身で長時間装着しないと歯が動かないため、装着を忘れてしまうと、再開時に強い即発性疼痛を感じることがあります。

インプラント矯正(アンカースクリュー)の痛み

インプラント矯正(インプラントアンカー)は、痛そうなイメージがあるかもしれませんが、実際にはほとんど痛くありません。入れる際も必要最小限の少量の麻酔で行うため、痛くてつらいということは少なく、外す時も麻酔なしで外せる程度です。

5.まとめ

矯正治療で歯が動く痛みは、治療初期やワイヤー交換後の2~3日間がピークとなる、一時的なものです。
この痛みは、歯が綺麗に並ぶために必要な、体が起こす反応であり、「歯が綺麗に並んでくれている証拠だ」と考えて乗り切ることが大切です。

痛みと上手に付き合うためには、食事の工夫、血流の改善、必要に応じた痛み止めの服用、そして何より担当医へのこまめな相談が有効です。痛みは必ず乗り越えられますので、美しい歯並びというゴールに向かって、一緒に頑張っていきましょう。

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