【監修:銀座青山You矯正歯科 紙屋町院院長】
「目立たない」「安い」「通院ゼロでOK」。スマートフォンを開くと、こうしたマウスピース矯正の広告を目にする方も多いと思います。一方で、「噛み合わせがおかしくなった」「お金を払ったのに歯が動かなかった」といった相談が増えているのも事実です。
YOU矯正歯科としては、マウスピースという「道具」そのものが悪いとは考えていません。問題なのは、その道具を「誰にでも使っていい」と思い込んでしまった医療の商売化です。この記事では、失敗が増えている背景と、矯正相談の前に知っておいていただきたい医院選びのポイントをお伝えします。
マウスピース矯正のトラブル相談が増えている
最近、マウスピース矯正について次のような相談が、私のところにも本当に増えています。
- 噛み合わせがおかしくなった
- 歯ぐきが下がって、歯がグラグラするようになった
- お金だけ払って、歯が全然動かなかった
マウスピース矯正は新しく、進化している技術のはずです。昔より機械もソフトも進歩しているのに、トラブルは減るどころか増えている。不思議に思われる方も多いのではないでしょうか。
矯正治療の転院についてお悩みの方は、こちらもご覧ください。
結論:悪いのは道具ではなく「医療の商売化」
YOU矯正歯科の考えでは、マウスピース矯正の失敗が増えている原因は、マウスピースという道具そのものにあるのではありません。その道具を「誰にでも使っていい」と思い込ませてしまった、医療の商売化にあります。
当院では、失敗が増えている大きな要因を次の3つと考えています。
- 「誰でも治る」という行き過ぎた広告表現によって、本来はワイヤー矯正が必要な難しい症例まで、マウスピースで引き受けてしまう医院が増えたこと
- 格安矯正やオンライン矯正の急増によって、医師のチェックや調整が不十分なケースが増えたこと
- 症例を選ばずに、ビジネスを優先して治療を始めてしまう医院が存在すること
ここから、それぞれの背景を詳しく説明します。
マウスピース矯正の失敗が増えている背景については、YOU矯正歯科のYouTubeチャンネルでもお話ししています。
要因1:「誰でも治せる」と思わせるネット広告
「痛くない」「短期間」「これだけで治る」という言葉の落とし穴
マウスピース矯正の広告では、「痛くない」「短期間で終わる」「これだけで治る」といった言葉をよく見かけます。
たとえるなら、ダイエット広告の「1週間でマイナス10キロ」と似ています。可能性としてゼロではありません。しかし、それがあなたに当てはまるかどうかは、まったく別の話です。
広告の症例写真は「治療しやすい」ケースがほとんど
広告に使われている症例写真は、実はかなり軽い、簡単なケースがほとんどです。前歯が少しだけガタガタしている、といった「治療しやすい」症例です。
それを見て「私の歯並びも、これで簡単に治るんだ」と思ってしまう方がいます。しかし、広告の主人公とあなたの歯並びは、全然違う話であることも少なくありません。
こうした「誰でも治る」という広告表現が広がった結果、本来はワイヤー矯正が必要な難しい症例まで、マウスピースで引き受けてしまう医院が増えたと、YOU矯正歯科では考えています。
マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いについては、こちらの記事もご覧ください。
要因2:格安矯正・オンライン矯正の広がり
ローンだけが残る問題
最近ニュースにもなっているのが、格安のマウスピース矯正やオンライン矯正を提供していた会社が、患者さんに多額のデンタルローンを組ませたまま事業をやめてしまうという問題です。これは社会問題になっています。
ローンだけが残り、治療は中途半端なまま。患者さんにとって非常に深刻な事態です。
「通院なし」「自宅で型取り」を当院が心配する理由
「通院なし」「型取りは自宅で」というスタイルについても、正直に言うと私は心配しています。
歯は、レントゲンやCTで骨の中まで見なければ分からないことがたくさんあります。矯正治療前に行う検査については、こちらの記事もご覧ください。表面だけを見て「これで矯正しましょう」と判断するのは、車でいえば、外装だけを見てエンジンの中を確認せずに「大丈夫、走れます」と言っているようなものです。
学会も注意喚起を出している
日本矯正歯科学会をはじめ、各国の学会も注意喚起を出しています。対面でしっかり診断せず、定期的に歯の動きを確認しないオンライン矯正は、元に戻せない口の中のトラブルを引き起こすリスクが高い、というものです。
これは私だけが言っていることではなく、専門家が広く声を上げている問題です。
要因3:症例を選ばずに治療を始めてしまう医院
ここからは、医療側、つまり私たち歯科医師側の問題です。正直にお話しします。
専門的な研修なしでも「矯正メニュー」を始められるようになった
以前、矯正治療は何年も専門のトレーニングを積んだ矯正専門医が中心に行うもので、とてもハードルの高い分野でした。
しかし今は、デジタルスキャナー(口の中を読み取る装置)や、マウスピースを作製する大手企業のシステムが普及しました。その結果、正直なところ、矯正の専門的な研修を受けていない一般の歯科医院でも、比較的簡単に「矯正メニュー」を始められるようになってしまいました。
たとえるなら、料理の自動調理器が発売されたからといって、誰でもすぐに一流シェフになれるわけではない、という話です。道具は優秀です。しかし、使う人間の判断力が伴っていなければ、結果は変わってしまいます。
3Dシミュレーションは「そのまま再現される」とは限らない
今の矯正治療では、パソコンの画面上で3Dシミュレーションを見せてもらえます。歯がきれいに並んでいく様子がアニメーションで動くので、見ていると「これで治るんだ」と安心してしまいますよね。
しかし近年の研究では、画面の中できれいに並んでいる歯並びが、必ずしも実際の口の中でそのまま再現されるわけではないことが分かってきています。シミュレーションソフトは、骨の厚み、歯の根の長さ、顎の関節の動き方までは、完全には計算できていないためです。
たとえば、引っ越しの荷物を配置図の上でパズルのように組んでも、実際に運ぶトラックの大きさや玄関ドアの幅を測っていなければ、現場で「入らない!」となることがあります。画面の中のきれいな計画と実際の口の中の間には、それくらいのギャップが生まれることがあるのです。
当院が考える「失敗の一番大きな原因」
システムが出した計画をそのまま鵜呑みにして、無理な歯の移動計画のまま治療を始めてしまう。YOU矯正歯科としては、これが今、マウスピース矯正の失敗の一番大きな原因になっていると考えています。
失敗を防ぐために、医院の「説明の仕方」を見極める
「誰でも、安く、早く」という言葉の裏には、必ずどこかにリスクが隠れています。これだけは覚えておいてください。
YOU矯正歯科としては、失敗を防ぐたった一つの方法は、医院の説明の仕方を見極めることだと考えています。具体的には次の2点です。
- メリットだけでなく、リスクもしっかり説明してくれるか
- 「マウスピースでは限界がある」ということを、誠実に伝えてくれるか
矯正相談で聞いてほしい一言
これから矯正相談に行く予定がある方は、ぜひこう聞いてみてください。
「私の症例は、本当にマウスピースだけで完結しますか?」
この質問への答え方こそが、その歯科医院を信頼してよいかどうかを判断する、一番分かりやすい試験紙になります。
矯正歯科を選ぶ際のポイントは、こちらの記事もご覧ください。
よくある質問
Q. マウスピース矯正そのものが危険なのですか?
A,YOU矯正歯科としては、マウスピースという道具そのものが悪いとは考えていません。問題は、本来ワイヤー矯正が必要な症例まで引き受けたり、十分な診断やチェックをせずに始めたりする、使い方の側にあると考えています。
Q. 通院なし・自宅で型取りができるオンライン矯正は問題がありますか?
A,歯は、レントゲンやCTで骨の中まで見なければ分からないことが多いため、当院としては「通院なし」「自宅で型取り」というスタイルを心配しています。日本矯正歯科学会をはじめ各国の学会も、対面での診断や定期的な確認をしないオンライン矯正について注意喚起を出しています。
Q. 3Dシミュレーションどおりに歯は並びますか?
A,必ずしもそのまま再現されるとは限りません。シミュレーションソフトは、骨の厚みや歯の根の長さ、顎の関節の動き方までは完全には計算できていないためです。当院では、その計画を鵜呑みにして無理な計画のまま始めることが、失敗の一番大きな原因になっていると考えています。
Q. 矯正相談では何を確認すればよいですか?
A,「私の症例は、本当にマウスピースだけで完結しますか?」と聞いてみてください。リスクも説明してくれるか、マウスピースの限界を誠実に伝えてくれるかが、医院を見極めるポイントです。
この記事の要点
- YOU矯正歯科としては、失敗の原因はマウスピースという道具ではなく、「誰にでも使っていい」と思い込んだ医療の商売化にあると考えています。
- 行き過ぎた広告によって、本来はワイヤー矯正が必要な難しい症例までマウスピースで引き受けてしまう医院が増えています。
- 格安矯正やオンライン矯正の急増で、医師のチェックや調整が不十分なケースが増えています。
- 3Dシミュレーションの計画を鵜呑みにし、無理な計画のまま始めることが、当院の考える失敗の一番大きな原因です。
- 相談時は「私の症例は、本当にマウスピースだけで完結しますか?」と聞き、リスクや限界を誠実に説明してくれるかを見極めましょう。
ご相談をお考えの方へ
マウスピース矯正が自分に合っているのか、ワイヤー矯正が必要な歯並びなのかは、実際に診察しなければ判断できません。YOU矯正歯科では、診察を通してあなたの歯並びに合った治療法をご説明します。「私の症例はマウスピースだけで完結するのか」を確かめたい方も、どうぞお気軽にご予約ください。