簡単に手にしたものは簡単に手放す

「楽な道」が、学びを浅くする理由

最近は、セミナーや学習もオンラインで手軽に受けられるようになりました。
私も、当初は「移動が面倒だし、料金も安いから」とオンラインでのセミナー参加を希望していました。
オンラインなら、スマホを見たり、適宜休んだりと、自分の好きなように過ごせるからです。

あるセミナーで現地に足を運んで参加したセミナーで、ある重要な事実に気づきました。
それは、「人間は、面倒くさいことをしないと深くは身につかない」ということです。

私たちは「支払った代償」が大きいほど、そこから得られる価値を高く見積もり、真剣に向き合おうとする性質があります。
早起きをして、服装を整え、慣れない場所へ向かうという「面倒なプロセス」そのものが、脳を「学習モード」に切り替えるスイッチになるのを実感しました。

「他人の経験」からは学べない、という真理

私たちはよく、「他人の失敗談を読んで、自分が失敗しないようにしよう」と考えます。
私も学生時代に、ビジネス誌を読み漁り、「人の体験から学べば、自分は痛い目を見ずに済むのではないか」と考えていました。
しかし、数十年のキャリアを経て辿り着いた結論は、「結局、自分自身が痛い思いや大変な思いをしない限り、本当の意味で知識は自分のものにはならない」というものでした。

知識として「知っている」ことと、体験として「身についている」ことの間には、深い溝があります。
特に、多額の交通費や宿泊費をかけたり、遠方から苦労してやってきたりした人ほど、その場の学びに対する「吸収力」が格段に違います。
それは、彼らが「それだけの痛み(コストや労力)を払った分、元を取らなければならない」という強い動機づけを持っているからです。

あるコンサルタントは、1万円のセミナーと10万円のセミナーで、あえて内容を変えないことがあると言います。
なぜなら、10万円を支払った受講者は、「10万円分のリターンを得よう」と必死に行動し、結果として10万円以上の価値を手にするからです。
価値は情報の質だけではなく、「受け取る側の覚悟と行動」によって決まるのです。

「行列のラーメン」と「ディズニーランド」の心理学

この「労力をかけることで価値が上がる」現象は、日常生活の至る所で見られます。
例えば、行列のできるラーメン店に並んで食べる一杯は、非常に貴重なものに感じられますが、もし同じ店がガラガラであれば、それほどありがたみを感じないかもしれません。

また、ディズニーランドのメリーゴーランドは、何十分も並んで乗るからこそ意味があるのであって、待ち時間ゼロで乗れる他の遊園地のものとは、体験としての「価値」が心理的に異なるのです。
私たちは、単に「乗り物に乗る」という結果だけでなく、「そこに到達するまでのプロセスや希少性」に価値を感じているのです。

遠回りが「折れない心」を育てる

仕事や人生において、すぐに結果が出る「器用な人」は羨ましく見えるものです。
簡単に手に入れたものは、失う時も一瞬かもしれません。
しかし、長い人生のスパンで見れば、10年、20年と苦労して積み上げてきたものほど、人はそれを手放さず、大切にしようとします。

思うようにいかない時期を過ごし、試行錯誤しながら得た経験は、あなたの血肉となり、簡単には揺らがない自信となります。
また、苦労している姿や頑張っている姿は、周囲の共感を呼びます。
「あの人を手助けしたい」「応援したい」という周囲のサポートを引き寄せるのは、効率よく立ち回る人よりも、むしろ不器用でも懸命に壁にぶつかっている人なのです。

直線が近道とは限らない

「直線が最短距離ではない」という言葉は、私たちが意識して生きたい言葉です。
今のあなたの苦労や、思うようにいかない現状、そして「面倒くさい」と感じる日々の業務。それらは決して無駄な時間ではありません。
むしろ、その「遠回り」こそが、あなただけの価値を作り上げ、将来のあなたを支える財産になっているのです。

コスパやタイパに縛られすぎず、目の前の「大変なこと」に少しだけ腰を据えて向き合ってみてください。
その先に、効率化だけでは決して得られない、深い充実感が待っているはずです。
もし今、あなたが何かに苦しんでいるのなら、それはあなたが「本物の価値」を手に入れようとしている証拠かもしれません。
焦らず、自分の歩みを信じて進んでいきましょう。

 

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