「心を込める」ということは、プロとしての「スイッチ」を入れること――相談の現場で学んだ心理学

治療の説明や手続きといった「決められた事実」を伝える仕事は整然と進められても、カウンセリングや相談のように「正解のない会話」の現場に立つと、どっと深い疲れを感じることがあります。特に、患者さんがいくつかの選択肢の中から自分に合ったクリニックを真剣に探している場面では、言葉の裏にある不安や表情を察しながら、一回一回のコミュニケーションに神経を集中させる必要があるからです。

1. 相手の心に届くコミュニケーションは「恋愛」に似ている

なぜ「選び選ばれる相談」はこれほどまでにエネルギーを消耗するのでしょうか。 心理学的な構造で見ると、それは「好きな人に自分を好きになってもらう」という恋愛のアプローチと非常によく似ています。
一方的な説明や理論だけで相手の気持ちを変えることは簡単ではありません。どんなにおしゃれや自分磨きをしても、相手の好みに寄り添い、気持ちに深く耳を傾けなければ心は動かないものです。

治療相談もまったく同じで、単に特徴や事実を並べるだけでは相手の心には届きません。「この方は何に悩み、何を求めているのだろう」と目の前の人に深く寄り添い、どれだけ気持ちを込めて向き合えるかという「熱量」こそが、相手の信頼を引き寄せる大きな鍵になります。

2. 「向いていない」を超えて――成果を変えたのはスキルではなく「マインド」

当クリニックのチームの中でも、最初から相談やカウンセリングが得意だった人ばかりではありません。
過去には、成約率が低迷し、「自分にはこの役割が向いていないのではないか」と真剣に悩み、無料相談から外れることすら検討されたスタッフやドクターがいました。

当時は周りからも心配されていましたが、彼らの治療技術や医学的知識は当時からすでに非常に優れたものでした。
では、何が彼らをトップクラスの相談担当へと変えたのでしょうか。 それは、専門知識の増減ではなく、試行錯誤を繰り返す中で育まれた「相談に臨むときのマインド(心の持ちよう)」の大きな変化でした。

3. 「素の自分」ではなく、プロとしての「別の自分」を演じる

あるベテランスタッフは、「相談に入るときは、いつもの自分とは違う『プロとしての自分』になり切って向き合っている」と話してくれました。
ここに「趣味」と「仕事」の決定的な違いがあります。

趣味は自分中心であり、自分が楽しんだりストレスを発散したりするためのものです。一方、仕事は相手のニーズに合わせて自分の対応をコントロールし、変化させていく作業です。 舞台に立つ役者が役に成り切って想いを届けるとき、一つの演目を終えるだけでエネルギーをすり減らすように、相手に合わせた役割を全力で演じることには相応のエネルギーが必要です。

周りから「いつも明るくて素敵ですね」と言われるスタッフも、実は決して「生まれつきの素の性格」だけで対応しているわけではありません。職場の扉をくぐった瞬間に「患者さんを安心させる自分」へと意識のスイッチを切り替えているからこそ、周りに安心感を与えることができるのです。

私自身も、朝はテレビなどのエンタメを控え、運動や冷水シャワーで仕事モードへ「オン」にし、業務が終われば静かに「オフ」へと切り替える日常のルーティンを大切にしています。

4. 100%の意識とコントロール――「想い」が未来を変えていく

毎回、命を削るように全力で気合を入れ続けていては、身体が持ちません。だからこそ、プロとしてのエネルギーのコントロールは欠かせません。

しかし、「作業としてなんとなくこなす対応」と、「この目の前の患者さんのために何ができるか」と100%意識を集中させて臨む対応とでは、相手に伝わる安心感も信頼も全く異なります。
これは医療現場の相談に限らず、困難なトラブルへの対応や、人生のさまざまな壁に向き合う時にも通じる共通の真理です。

もし今、仕事や人間関係で「うまくいかない」「自分には向いていない」と悩んでいる方がいても、諦める必要はありません。
自分自身の技術や性格を責めるのではなく、向き合うときの「気持ちのスイッチ」を少し切り替えてみる。それだけで、相手の反応も、自分自身が得られる成果ややりがいも、大きく変わり始めていくはずです。

 

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-院長青山健一のブログ「幸せってなぁに?」

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