【監修:銀座青山You矯正歯科 紙屋町院院長】
矯正装置が何度も外れるとき、「自分の食べ方や歯磨きが悪いのかな」と責める必要はありません。YOU矯正歯科としては、接着の手順や噛み合わせなど、治療する側の原因も確認すべきだと考えています。
一方で、噛む力や被せ物の素材など、技術だけでは防ぎきれない要因もあります。原因を見直すポイントと、外れたときの対応をお伝えします。
「矯正装置が繰り返し外れる原因と、YOU矯正歯科が重視する対応について、動画でもお話ししています。」
矯正装置が何度も外れるなら、治療する側の原因も確認を
私が35年以上歯科医師として診療し、全国11医院を見てきた中で、お伝えしたいことがあります。それは、装置が繰り返し外れることを、患者さんの責任だけで片づけてはいけないということです。
私のクリニックには、「他の医院で何度も装置が外れ、治療が進まないことが不安になった」という方が、セカンドオピニオンとして多く相談に来られます。
YOU矯正歯科では、できるだけ歯を抜かない矯正を大切にし、3Dスキャナーも活用しながら、外れにくく精密な治療を心がけています。そのうえで重視しているのが、装置をつける際の一つひとつの作業です。
ここで扱うのは、主にワイヤー矯正で歯に接着する「ブラケット」などの装置です。何度も外れる場合、当院としては、まず次の4点を確認すべきだと考えています。
当院が重視する、医院側の4つの確認点
1.接着するときの乾燥と、唾液を防ぐ作業
装置は専用の接着剤で歯につけます。このとき、接着する面に唾液などが入り込むと、接着の強さに影響します。
濡れたガラスにセロハンテープを貼ると、すぐにはがれてしまう場面を想像してみてください。接着前の水分管理が大切だということを、当院ではこのように説明しています。
歯科の接着はテープと同じ仕組みではありませんが、「つける面の状態を整える」という点は共通しています。
接着剤が進歩しても、材料に合った乾燥を行い、唾液が入らないようにする作業は欠かせません。当院としては、ここが不十分なままでは、繰り返し外れる原因になると考えています。
2.装置をつける前に、歯の表面を十分清掃しているか
歯の表面には、目に見えにくい薄い膜や汚れがついています。装置をつける前に、専用のブラシやペーストなどで表面を十分清掃し、接着に適した状態に整えることが大切です。
当院が問題だと考えるのは、この準備を「この程度でいいだろう」と済ませてしまうことです。接着剤が歯の表面にしっかり接するための準備が不十分なら、装置の外れやすさにつながります。
患者さんの歯磨きだけでなく、医院側が装着前の清掃を丁寧に行っているかも、確認したいポイントです。
3.噛んだときに、反対側の歯が装置に当たっていないか
上の歯が下の歯につけた装置に直接当たると、接着した部分に強い力がかかります。こうした衝突は、接着剤を強くすることだけでは解決できません。
当院では、装置をつける位置と噛み合わせの確認を重視しています。ぶつかりそうな場所があれば、必要に応じて歯科用の樹脂を盛り、噛む高さを調整して、装置への直接の接触を避ける工夫をします。
また、3Dスキャナーによる情報や噛み合わせのシミュレーションを、接触しそうな部分の確認に役立てるという考え方も大切にしています。機器の情報を、実際の装置の位置や噛み合わせの調整につなげることが重要です。
4.接着の手順と、装置をつける位置が適切か
接着剤の量、光を当てて固める時間、装置をつける位置にも、丁寧な判断が必要です。
私がこれまで診療してきた経験では、手順を知っているだけで、どの患者さんにも同じように対応できるわけではありません。材料の使用手順を守ったうえで、個々のお口の状態に合わせる経験が求められます。いわば「職人の世界」と感じる部分です。
3Dデータで装置の位置を計画し、専用のトレーを使って歯に移す方法もあります。これは、計画した位置に装置をつけるための方法です。
私としては、こうした方法を学ばず、従来の感覚だけに頼り続ける姿勢は、エラーにつながると考えています。
歯科医師の技術だけでは防ぎきれない3つの要因
1.噛む力や、歯ぎしり・食いしばり
装置にかかる力は、思っている以上に大きいものです。強く噛みしめる力や、寝ている間の歯ぎしり、スポーツ中の食いしばりが、装置への負担になります。
氷や硬いお煎餅などを強く噛むことも、装置が外れるきっかけになります。
私としては、エラが張っている骨格の方や、スポーツで強く食いしばる癖がある方では、噛む力にも注意を向けることが大切だと考えています。ただし、見た目だけで装置が外れた原因を決めるものではありません。
2.銀歯・セラミック・ジルコニアなど、被せ物の素材
成人の矯正では、銀歯やセラミック、ジルコニアなどの被せ物がある状態で治療を始めることがあります。
被せ物への接着には、天然の歯への接着とは異なる配慮が必要です。素材に応じた処理をしても、接着の難しさが残ることがあります。
当院としては、こうした素材の制約まで、すべて歯科医師の技術不足として扱うべきではないと考えています。
何度も外れる場合には、「同じ被せ物の場所で繰り返しているのか」という点も、原因を考えるうえで大切です。
3.歯ぐきの炎症と、接着時の出血
歯磨きが十分にできず、歯ぐきが炎症を起こして腫れていると、装置をつける際に血液や組織液が出ることがあります。組織液とは、歯ぐきの周囲からにじむ液体のことです。
接着する面に血液などが入り込むと、接着力が低下します。そのため、装置をつけ直す作業だけでなく、歯ぐきの状態を整えることも重要です。
口腔衛生の状態が悪い患者さんで、ブラケットが外れやすい傾向を示した研究もあります。
毎日のケアには、ワイヤー矯正中の歯磨き方法も参考にしてください。
当院が特に見落としてほしくないと考えているのが、この歯ぐきの状態です。医院側の接着の工夫と、毎日のケアの両方が必要になります。
装置が外れる負担を減らすために、当院が伝えたい3つの対策
1.補助用具も使って、歯ぐきの状態を整える
ワイヤーの下や装置の周囲には、普通の歯ブラシだけでは届きにくい場所があります。
当院では、歯間ブラシや、毛先が小さくまとまったタフトブラシなどの活用を勧めています。水流で洗浄するウォーターフロスも、ケアを補う道具の一つです。
歯ブラシに補助用具を組み合わせて、装置の周囲を清潔に保ちましょう。
また、当院としては、矯正を始める前に歯科医院でクリーニングを受け、歯ぐきの状態を整えておくことも大切だと考えています。装置をつける準備は、歯の表面だけでなく、歯ぐきにも必要です。
2.デジタル技術を、装置の位置や適合の工夫に生かす
3Dスキャナーでお口の形を読み取り、その人に合わせた装置の設計や、装着位置の計画に利用する方法があります。
当院がこうした技術に着目するのは、歯の曲面に合う接着面を設計し、接着面積を確保する工夫につなげたいからです。計画した位置に装置をつける方法と、装置そのものの接着面を個別に設計する方法は、分けて考える必要があります。
被せ物が多く、装置の接着に不安がある方にとって、こうした技術を活用する医院を検討することも一つの選択肢です。
ただし、3Dスキャナーの導入だけで、被せ物への接着の難しさが解消されるわけではありません。どの装置を使い、素材や噛み合わせにどう対応するのかまで確認することが大切です。
3.外れたら、次の予約を待たずに連絡する
当院が最も強くお伝えしたいのは、装置が外れたら、すぐに治療中の歯科医院へ連絡してほしいということです。
「また通うのは大変だから、次の予約まで待とう」と、そのままにしないでください。
装置が外れた部分では、計画した力が伝わらず、歯が予定どおり動かなくなったり、動かした歯が戻ったりすることがあります。ブラケットの脱落と治療期間の延長との関連も報告されています。
「また外れてしまって申し訳ない」と遠慮する必要はありません。外れたことを伝え、受診のタイミングを確認してください。
連絡時には、矯正装置のトラブル時の対応もご確認ください。
矯正装置が外れることについてのFAQ
Q.何度も装置が外れるのは、歯科医師の技術の問題ですか?
A. YOU矯正歯科としては、繰り返し外れる場合、接着時の乾燥や清掃、噛み合わせ、装着手順など、医院側の原因も確認すべきだと考えています。一方で、噛む力や被せ物の素材、歯ぐきの炎症も関係するため、外れた回数だけで技術不足とは断定できません。
Q.被せ物がある歯では、装置が外れやすいのでしょうか?
A. 被せ物では、素材に応じた接着の処理が必要です。当院としては、セラミックやジルコニアなどで生じる接着の難しさを、歯科医師の技術だけの問題にしないことが大切だと考えています。繰り返し外れる場所と、その歯の素材を確認したり別の方法を提案します。
Q.装置が外れたら、次の予約まで待ってもよいですか?
A. 当院では、そのまま待つことは勧めていません。治療の進み方に影響するため、まず治療中の歯科医院へ連絡し、受診のタイミングを確認してください。
この記事の要点
- 装置が何度も外れるとき、患者さん側だけでなく医院側の原因も確認すべきだと考えています。
- 医院側では、乾燥と唾液の管理、装着前の清掃、噛み合わせ、接着手順と装着位置を重視すべきです
- 噛む力、被せ物の素材、歯ぐきの炎症など、技術だけでは防ぎきれない要因もあります。
- 当院では、毎日のケアと装置の適合・位置の工夫を大切にし、外れた際にはすぐ連絡することを勧めています。
装置が何度も外れて治療の進み方に不安がある方は、かかりつけ医にご相談ください。
外れる場所や被せ物の有無、これまでの経過を伺い、お口の状態を診察したうえで、ご自身に合う対応や治療方法を確認してくれると思います。