日々の仕事や人間関係の中で、「もっと認められたい」「自分は周りの人とは違う」「自分は特別の存在になりたい」という思いが頭をもたげ、ふとした瞬間に誰かと自分を比べて疲れてしまうことはありませんか?
こうした「特別でありたい」という願いと、それゆえに生まれる人間関係の摩擦に悩むことがあります。
今回は「優越感と劣等感のメカニズム」をヒントに、私たちがもっと楽に、そして豊かに人と繋がっていくための心の持ち方について考えてみたいと思います。
「何者か」になりたかったあの頃の私
私たちは若い頃、多かれ少なかれ「何者か」になりたいと願って生きています。
足が速い、勉強ができる、容姿が優れている、あるいはブランド品を持っている、いい車に乗っている……。
何かしらの基準で人より優位に立ち、優越感に浸ることで自分の価値を確かめようとする時期が誰にでもあるものです。
しかし、この「自分は特別だ」という意識は、実は非常に脆い土台の上に立っています。
なぜなら、「優越感」と「劣等感」は常にセットだからです。
何かの基準で「自分が上だ」と感じている人は、同じ基準で自分より優れた人(より高い偏差値、より高級な車、より優れた実績を持つ人)に出会った瞬間、激しい劣等感に襲われることになります。
自分を「特別だ」と思い、特別扱いされるのが当然だと考えていると、そう扱われなかった時に怒りが湧き、特別でなくなった瞬間に人生が惨めに感じられてしまうのです。
「自尊心」と「他尊心」のバランス
例えば職場での人間関係において「ドクターとスタッフ」の間にあるような見えない壁も、こうした「自分は特別だ」という意識の偏りから生まれることがあります。
責任の重さや職種の違いはあっても、それを「人間としての上下」と勘違いし、マウントを取ってしまうと、信頼関係は途端に崩れてしまいます。
ここで大切になるのが、「自尊心(自分を大切にする心)」と「他尊心(他人を尊重する心)」のバランスです。
もちろん、プロフェッショナルとして自信を持つことは不可欠です。
しかし、「自信」が行き過ぎて「過信」となり、自分だけを特別視するようになると、周囲とのバランスが取れなくなります。
自分を大切にするのと同じ分量だけ、目の前の相手の役割や努力を尊重する「他尊心」を意識的に持つことで、初めて安定した信頼関係を築くことができます。
一流のアスリートのように、どれほど特別な才能を持っていても、自分を「普通の一人」として律し、周囲への敬意を忘れない姿勢こそが、結果としてその人の人間的な魅力を高めるのです。
「いい流れ」は、小さな行動の積み重ねから
人間関係や職場の雰囲気が良くなる時、そこには理屈では説明できない「いい流れ」が生まれています。この流れは、ある日突然劇的に変わるものではありません。
日々の誠実な対応、相手への感謝、そして「自分も相手も等しく大切にする」という姿勢。そうした小さな行動の積み重ねが、コップから水が溢れ出すように、ある時ふと「このチームで働けて良かった」という実感として現れてくるのです。
もしも、あなたが「優越感」と「劣等感」のバランスに違和感を感じているなら、一度「自分だけを「特別」だと思おうとしていないか?」と自分に問いかけてみてください。
そして、自分への「特別感」を一旦横に置いて、目の前の相手の「特別」を一つ探してみませんか。
どうしても「自分は特別である」と思いたいのであれば、その気持ちと同じ量だけ「他人も特別である」と思ってみてください。
それができないのであれば「自分は特別ではない、けれど、かけがえのない大切な一人である」――そう思えた時、あなたの周囲には、穏やかで心地よい「いい流れ」が流れ始めるはずです。