【監修:銀座青山You矯正歯科 紙屋町院院長】
マウスピース矯正のトラブルには、格安矯正やAIによる診断結果をうのみにしてしまうといった「業界側の問題」があります。一方で、患者さんご自身の歯並びや使い方に関わる原因もあります。
業界側の問題については、「格安矯正の注意点」をまとめた記事もご覧ください。
YOU矯正歯科としては、マウスピース矯正で失敗しやすいケースには3つの共通点があると考えています。
1つ目は、ワイヤー矯正が必要な難しい症例なのにマウスピースで始めていること。2つ目は、装着時間を守れていないこと。3つ目は、噛み合わせを無視して見た目だけを整えていることです。
この記事では、マウスピース矯正が物理的に苦手なことと、失敗を避けるための対策をお伝えします。「自分の歯並びは大丈夫だろうか」と気になっている方は、ご自身に当てはまるところがないか確認しながら読んでみてください。
マウスピース矯正で失敗しやすい人の3つの共通点

当院が考える共通点は、次の3つです。
- ワイヤー矯正が必要な「難しい症例」なのに、マウスピースで始めている
- 1日の装着時間を守れていない
- 噛み合わせを無視して、見た目だけをきれいに並べている
1つ目は歯並びそのものの問題です。2つ目は患者さん側の要因で、3つ目は治療の進め方の問題です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
共通点1:ワイヤー矯正が必要な難しい症例を、マウスピースで始めている
マウスピース矯正には、物理的にどうしても苦手な歯の動かし方があります。そうした症例をマウスピースだけで始めてしまうことが、1つ目の共通点です。
口ゴボ・シャクレなど、顎の骨の位置が関わるケース
口ゴボ(口元が前に突き出て見える状態)やシャクレ(下顎が前に出ている状態)のように、歯だけでなく「顎の骨」そのものの位置を調整しなければならないケースがあります。
これは、歯を動かすというより、家でいえば土台の基礎工事が必要な話です。壁紙をきれいに貼り替えるだけでは済みません。
抜歯して、歯を大きく動かすケース
歯を抜いてスペースを作り、そこへ歯を大きく動かしていく治療も注意が必要です。
マウスピースだけで行うと、歯がスペースに向かって斜めに倒れ込んでしまうことがあります。見た目には動いたように見えても、実は歯の根の向きがおかしくなっていることがあるのです。
重度のガタガタ(叢生)や、骨の中に埋まったままの歯
重度のガタガタも注意が必要です。これを専門的には「叢生(そうせい)」と呼びます。骨の中に埋まったままの歯(埋伏歯)も同様です。
こうした歯には、複雑で立体的な動きが必要です。正直にお伝えすると、この分野はマウスピースが一番苦手とするところです。
ワイヤー矯正の特徴については、こちらのページでご紹介しています。
共通点2:1日20~22時間以上の装着時間を守れていない

2つ目は、患者さん側の要因です。マウスピースの装着時間を守れていないケースです。
マウスピース矯正では、1日20時間から22時間以上つけていることが絶対条件です。外してよいのは、食事と歯磨きの時間くらいです。
これは、実際にはかなりハードルが高いことです。飲み会で盛り上がって、つい長時間外してしまう。忙しくて、つけ忘れてしまう。こうしたことは誰にでも起こり得ます。
外す時間が長いと、次のマウスピースが入らなくなる
外している時間が長くなると、歯が計画通りに動かなくなります。そうすると、次のステップのマウスピースが口の中に入らなくなってしまいます。
無理にはめると、歯ぐきや歯の根に影響が出ることも
合わなくなったマウスピースを無理やりはめようとすると、歯ぐきが下がって歯の根が見えてしまうことがあります。最悪の場合は「歯根吸収」といって、歯の根そのものが溶けてしまうこともあります。
少し怖い話ですが、とても大事なところなので、あえてはっきりお伝えしています。
共通点3:噛み合わせを無視して、見た目だけをきれいに並べている
3つ目は、噛み合わせを無視して、見た目だけをきれいに並べてしまうケースです。YOU矯正歯科としては、実はこれが一番多い失敗パターンだと考えています。
鏡で見ると、前歯はきれいに並んでいる。「わあ、きれいになった!」とうれしくなる。ところが、奥歯で「ガリッ」と噛んでみると、しっかり噛み合っていない。当たっているのは前歯だけ、という状態です。
これは、見た目の点数だけを良くして、実際に使う機能を見落としてしまっている状態です。つまり、噛むという一番大事な役割が抜けています。見た目では分かりにくいものの、生活するうえで一番困るのはこの部分です。
マウスピース矯正で失敗しやすい3つの共通点について、動画でもお話ししています。
「マウスピースか、ワイヤーか」の二択にこだわらない

ここまで失敗の原因をお伝えしてきましたが、希望のある話もあります。
まず知っておいていただきたいのは、「マウスピースか、ワイヤーか」という二択の考え方は、もう古いということです。
今、矯正の学会などでも主流になりつつあるのが、それぞれの長所を組み合わせる「ハイブリッド矯正」という考え方です。
アンカースクリュー(TADs)を固定の支点にする
その一つが、TADs(歯科用アンカースクリュー)を使う方法です。顎の骨に小さなチタン製のネジを一時的に埋め込み、そこを歯を動かす際の固定の支点にします。
たとえるなら、テントを張るときのペグのようなものです。地面にしっかり固定された点があるからこそ、テント全体をピンと張ることができます。

アンカースクリューを使うことで、マウスピースだけでは動かせなかった歯の移動が可能になることがあります。
装置については「アンカースクリューを使った矯正治療」もご覧ください。
難しい移動はワイヤー、最後の微調整はマウスピースで
もう一つは、治療の段階で装置を使い分ける方法です。
たとえば、抜歯したスペースを閉じる、傾いた歯を立ち上げるといった最初の難しい移動は、ワイヤーで行います。そのうえで、最後の微調整をマウスピースで仕上げます。
それぞれの得意なところを「いいとこ取り」する発想です。

マウスピース矯正で失敗しないための3つのアドバイス
最後に、失敗を防ぐために覚えておいていただきたいことを3つお伝えします。
1.「安さ」や「通院なし」という言葉だけで選ばない
対面でのしっかりとした精密診断は、絶対に必要です。
当院での診断の流れはこちらをご覧ください。
2.矯正を専門的に学び、多くの症例を経験している歯科医師の診断を受ける
矯正歯科を専門的に学び、多くの症例に携わってきた専門医の診断を受けることが大切です。
3.ワイヤー矯正の可能性もきちんと提案してくれるかを確認する
相談の際、最初からマウスピース一本だけを勧めてくる医院は、少し注意して見たほうがよいかもしれません。
この記事でお伝えした「失敗する人の共通点」に、思い当たる部分があった方もいるかもしれません。それでも心配しすぎる必要はありません。YOU矯正歯科としては、きちんと知識を持って適切な歯科医院を選べば、防げるトラブルがほとんどだと考えています。
よくある質問
Q.マウスピース矯正が苦手なのは、どのような歯並びですか?
A,YOU矯正歯科としては、次のような症例はマウスピースだけでは難しく、ワイヤー矯正が必要になると考えています。
- 口ゴボやシャクレのように、顎の骨の位置が関わるケース
- 抜歯して歯を大きく動かすケース
- 重度のガタガタ(叢生)がある場合
- 骨の中に埋まったままの歯がある場合
特に、複雑で立体的な動きはマウスピースが最も苦手とする分野です。
Q.マウスピースは1日にどれくらいつける必要がありますか?
A,1日20時間から22時間以上の装着が絶対条件です。外してよいのは、食事と歯磨きの時間くらいです。
装着時間が足りないと歯が計画通りに動かず、次のマウスピースが入らなくなります。それを無理にはめると、歯ぐきが下がったり、最悪の場合は歯根吸収が起きたりすることがあります。
Q.前歯がきれいに並べば、矯正は成功といえますか?
A,当院では、見た目だけでは十分とは考えていません。前歯がきれいに並んでいても、奥歯がしっかり噛み合わず、前歯しか当たっていない状態では、生活するうえで困ることになります。
YOU矯正歯科としては、噛み合わせを無視して見た目だけを整えてしまうことが、一番多い失敗パターンだと考えています。
Q.マウスピース矯正が難しいと言われたら、ワイヤー矯正しかないのでしょうか?
A,「マウスピースか、ワイヤーか」という二択だけではありません。アンカースクリュー(TADs)を支点にすることで、マウスピースだけでは難しかった歯の移動が可能になることがあります。
また、難しい移動はワイヤーで行い、最後の微調整をマウスピースで仕上げる方法もあります。
この記事の要点

- YOU矯正歯科としては、マウスピース矯正で失敗しやすい人には「難しい症例をマウスピースで始めている」「装着時間を守れていない」「噛み合わせより見た目を優先している」という3つの共通点があると考えています。
- 顎の骨が関わるケース、抜歯して大きく歯を動かすケース、重度の叢生、埋まった歯などの立体的な動きは、マウスピースが最も苦手とする分野です。
- 1日20~22時間以上の装着が絶対条件です。合わなくなったマウスピースを無理にはめると、歯ぐきの下がりや歯根吸収につながることがあります。
- 見た目だけでなく、奥歯まで噛み合っているかが大切です。当院では、噛み合わせを見落とすことが一番多い失敗パターンだと考えています。
- 二択にこだわらず、アンカースクリューやワイヤーとの組み合わせを検討できる医院で、対面の精密診断を受けることをおすすめします。
ご自身の歯並びがマウスピース矯正に向いているのか、ワイヤーとの組み合わせを考えたほうがよいのかは、見た目だけでは判断できません。YOU矯正歯科では、歯並びだけでなく噛み合わせも含めて診察し、一人ひとりに合った治療方法をご提案します。
「自分の歯は大丈夫?」と気になった方は、まずは一度ご相談ください。



