ふとした瞬間に、誰かと自分を比べてしまうことはありませんか?
話し上手な同僚、てきぱきと結果を出す知人、キラキラして見えるSNSの誰か。
そんな「理想の誰か」と、不器用で欠点ばかりが気になる「今の自分」を並べては、出口の見えない気持ちになってしまう……。
実は私自身も、長い間そんな思いを抱えてきました。
先日、こんな出来事がありました。
仕事で訪ねてこられた方が、私のYouTubeをご覧になっていて、「先生の話し方や雰囲気が、個人的にすごく好きなんです」と声をかけてくださったのです。
私は思わず、「いやぁ、若い人にはあまり受けないんですけどね」と、自虐的な冗談を返してしまいました。
というのも、私自身、自分の話し方が上手だとは思っておらず、すらすらと淀みなく話せる人を、ずっと羨ましく感じていたからです。
すると、その方はこう続けてくださいました。
「いろんな経験を通じて年齢を重ねていくと(その方は50歳代)、流暢でハキハキしすぎている方より、少し言葉に詰まったりする、飾らない話し方の方が、かえって信頼できるんですよ」
この言葉に、私は大切なことを思い出させてもらいました。
私たちの魅力や個性は、決して「一方向」だけで測れるものではありません。
ある人にとっては物足りなく感じられることが、別の人にとってはかけがえのない安心感になる。
それはまるで、人と人との「相性のじゃんけん」のようなものです。
じゃんけんの「グー」は、チョキには強くても、パーには敵いません。
もし「自分はパーに負けてしまうダメなグーだ」と落ち込むことがあったとしても、あなたのその力強さを必要としている「チョキ」の方が、どこかに必ずいるのです。
例えば、私は自分のことを「せっかち」だと思っています。
患者様をお待たせすることが何より嫌なので、院内を動き回り、時間を大切にしながら診療にあたっています。
それを「時間を大切にしてくれて助かる」と喜んでくださる患者様もいれば、「少し急かされているようで落ち着かない」とマイナスに感じる方もいらっしゃいます。
100人中100人に好かれる、完璧な人などいません。
もし誰かとの間にすれ違いがあったとしても、それは「あなたが悪い」のではなく、「今回は、じゃんけんの相性が合わなかっただけ」なのかもしれません。
私たちにはつい、自分にないものを羨ましく思ってしまう癖があります。
隣の芝生はいつも青く見えますし、優れた誰かを見ると「あんな風になれたら、、」と願ってしまうものです。
もちろん、誰かから学ぶ姿勢はとても大切です。
けれど、無理に自分ではない誰かの色に染まろうとすると、どこかで心が疲れてしまい、自分自身を苦しめることにもなりかねません。
大切なのは、少しずつでも「自分らしい色」を出していくこと。
そして、その色を「いいですね」と言ってくれる方との出会いを、身近なところから少しずつ増やしていくことではないでしょうか。
短所と長所は、実はコインの表と裏のようなものです。
「優柔不断」は「慎重さ」に、「せっかち」は「効率のよさ」に、「口下手」は「誠実さ」につながっています。
自分の短所ばかりを見つめて下を向くのではなく、その裏側にある、自分だけの光にも目を向けてみてください。
もし今、「自分には向いていないのかもしれない」「誰にも認めてもらえない」と、少し心細さを感じているなら、一度視点を変えてみませんか。
今いる場所でうまくいかないのは、あなた自身の問題ではなく、単に「環境」や「相性」の問題であることも少なくありません。
場所が変わり、出会う人が変われば、驚くほど輝き出す種を、あなたはすでに持っているはずです。
無理に自分を変えようとしなくても大丈夫です。
自分に備わった「色」を信じて、今日という一日を、自分らしく過ごしてみてください。
そんな小さな積み重ねが、いつかきっと、「あなたにしか出会えない誰か」との出会いへとつながっていくはずです。

